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「ポケット電卓による計算解析 −HP 25による−」の版間の差分

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(相違点なし)

2024年6月2日 (日) 12:00時点における最新版

メインページ > RPN電卓 > 所有する電卓に関する書籍 > ポケット電卓による計算解析 −HP 25による−

恐らく日本語で初めて、HP製RPN電卓(HP-25)の使用方法について、プログラミングを中心に言及した書籍。本書はスイスの数学者で数値解析が専門のPeter Henriciが著した数学専門書 Computational Analysis with the HP-25 Pocket Calculator (A Wiley-Interscience Publ., John Wiley & Sons, 8th Jun. 1977, ISBN 0471029386) の邦訳である。翻訳者は著名な数学者で当時から数学教育へ電卓を導入することに積極的なことで有名な京都大学数理解析研究所教授(当時)の一松信氏。帯には以下のような文言がある。

この本は特定のプログラマブルなポケット電卓HP-25用に書かれた35個ほどのプログラムを含む。これらのプログラムは数論、方程式の解法、代数的安定理論、べき級数の計算、数値積分のほか、ガンマ関数、各種のベッセル関数、誤差関数、リーマンのゼータ関数などの高等特殊関数の数値計算のための算法を具体化したものである。(中略) この本はポケット電卓用の世界最初の高級数学プログラム集である。

一松氏によるあとがきには、氏ご自身がHP-25「プログラム可能な電卓の傑作の一つ」と評して愛用しており、原書にあったプログラムの誤記訂正や改良を施している旨が書かれているが、同時に、本書の初版発行時点でHP-25の販売終了が近付いていた[1]ことやプログラミングでアドレッシングモードが使えないことから、HP-25は歴史的使命を終えて、後進の29Cや19Cに道を譲ろうとしています。」HP-25が既に時代遅れであることを冷静に指摘しつつも、「しかしこの本のプログラムは、単にすぐ役立つだけでなく、算法やプログラミング上の工夫をも示しています。(中略) したがってHP-25自体が舞台から退場しても、この本は依然として高い価値を保つと信じます。」と記していることから、本書を、単にHP製RPN電卓でのプログラミング技法を解説するためだけではなく、数値解析のプログラミング技法を習得するためのものと位置付けていることが判る。

事実、管理人が古書店から購入した本書には、169ページ『誤差関数』でプログラム向けに落とし込んだ式[2]をBASICに似た言語で25行のプログラムソースコードに起こし、それを実行した結果と共に、1行16文字・幅44.45mm=1インチ¾の普通ロール紙[3]に印刷したものが栞代わりに挟まれていたので、前の持ち主はHP製RPNプログラム電卓ではなく別のプログラミング電卓かポケコンで本書の内容を実践したと思われる。

ペーター・ヘンリチ 著。一松信 訳。1978年2月10日初版発行。現代数学社刊。216ページ。無線綴じ並製本。定価1,900円。

脚注

  1. 本書初版発行の約3ヶ月後である1978年5月1日で販売終了
  2. 誤差関数を合流型超幾何微分方程式として書き換え、更にKummerの第1等式で表した erf(x)=2π0xet2dt=2xπ 1F1(12 ; 32 ; x2)=2xπex2 1F1(1 ; 32 ; x2) を使っている
  3. 調べたものの、純正周辺機器のラインナップから、この仕様に合致するプリンタが見付けられない。当時の電卓向けの純正プリンタは「1行20文字」で「感熱紙を使うサーマルプリンタ」か「放電記録紙を使う放電破壊プリンタ」だが、栞として挟まれていたものは、1980年代に商店のレジから吐き出されたレシートと同じく「1行16文字」で「普通紙に青色インクで印字したドットインパクトプリンタ」である。また、ロール紙の幅1インチ¾というのも見たことが無く、少なくとも国内では現行のロール紙として販売されていない。印刷されているキャラクタとしてアルファベットと数字の他に√とπと𝔼(指数記号Eを黒板太字としている。ちなみに、指数記号をEと正式に規定したのはISO 6093が1985年、JIS X 0210が1986年だが、それより前から使われてはいた)があるので、開平をSQRT、円周率をPIと表記するHP製RPN関数電卓や大半のプログラミング言語では無く、他社製の関数電卓かポケコンに入力したソースコードを直接印刷したものと思われるが、プリンタを含めて使用機種は不明である。最も可能性が高いのは、カシオ計算機株式会社製の関数電卓とポケコン向けのオプション機器として、IEEE 1284(いわゆるセントロニクス規格)の14ピンで汎用プリンタへ印刷できるインタフェースボックス・CASIO FA-6が販売されていたので、これに対応したカシオの関数電卓もしくはポケコンにソースコードを入力し、それにFA-6を装着、会社もしくは大学等でドットインパクトプリンタと接続して印刷したのだろう。
    なお、この栞に残された演算結果は、本書に記載されているHP-25での演算例と比較しても全桁合っているため、プログラムのソースコードが正しいことと、演算精度がHP製RPN関数電卓と同等以上の機種を使用していたことは判る。