HP 82120A

提供:Memorandum

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HP-41シリーズ用Ni-Cd充電池パック。HP-41CXの乾電池ボックスと入れ替えて装着後、純正ACアダプタ(HP 82059D)を接続し、充電して使用する。

磁気カードリーダライタ(HP 82104A)は磁気カードの取込む際にモータを駆動するため約150mAを、バーコードリーダ(HP 82153A)はボタン押下時に読取用LEDを発光させるため約50mAを、それぞれHP-41シリーズ本体に装着されたバッテリから消費する。HP-41シリーズは、電源OFF時で約0.01mA、電源ON後に何もしないアイドル状態で約0.55mA、何らかの物理キーが押下された瞬間で約8mA、その後の演算で約7mAしか消費しないため、これら周辺機器の消費電流は文字通り桁違いに大きい。よって、これら周辺機器を頻繁に使用するユーザがアルカリ単5形乾電池を大量に消費せずに済む[1]よう発売された。

Ni-Cd充電池であることも相俟って公称容量が65mAhと非常に小さく、HP-41シリーズの電源を入れない状態を12〜16時間維持しなければ満充電にならない。その理由は、昨今のACアダプタとは異なり、HP 82059Dの出力電圧がAC8Vであるため、この充電池パック自体にNi-Cd充電池と全波整流後に三端子レギュレータ78L12(12V/0.1A)と基準電圧源用ツェナーダイオードで構成された充電回路も内蔵しなければならないこと、この充電回路から出力される直流電力が6.8V/40mAと微弱であること、充電回路を内蔵するために充電池そのものが「単5形を横に二等分した大きさ」[2]という極小サイズであること、の3つだ。当時のアルカリ単5形乾電池ですら容量が500mAhであったことを考えると、購入に躊躇する[3]スペックである。

既に製造は停止しているので、延命するには、プラスティックケースを殻割りし、内蔵している特殊形状[2]のNi-Cd充電池を交換すれば良く、その手順は世界中のマニアにより公開されている。だが、延命したとて、充電池自体の大きさから由来する充電容量の小ささは如何ともし難く、そこまでして入手する必要は無いだろう[3]。2022年時点で単5形Ni-MH充電池[4]の充電容量は700mAhもあるので、これを充電器で充電し、アルカリ単5乾電池と差し替えて使う方が便利で経済的である。

脚注

  1. HP-41CX Owner's Manual Vol.2にもWhen you use peripheral devices that draw power from the HP-41 batteries (such as the card reader or the optical wand), total battery life will be reduced considerably. If you use peripherals frequently,it is recommended that you power the HP-41 with an HP 82120A Rechargeable Battery Pack. (HP-41のバッテリから電力を消費する周辺機器(磁気カードリーダライタやバーコードリーダなど)を使用するとバッテリの総寿命が大幅に短くなります。周辺機器を頻繁に使用する場合は、HP-41にHP 82120Aを使用することをお勧めします。) と記載されている。
  2. 2.0 2.1 海外では単5形電池を一般にN batteryと呼ぶため、このタイプの充電池は俗に½ (half) N batteryと呼ばれる。
  3. 3.0 3.1 「『HP-41シリーズに純正ACアダプタを接続するコネクタを増設するためのパッケージ』として購入する」という考え方もなくはないが、Ni-CdにしろNi-MHにしろ、劣化した二次電池を充電し続けると液漏れや発火の危険があるため、二次電池をDIYで交換できないユーザにはお勧めできない。この場合は二次電池を取り去り給電回路(もと充電回路)のみとしたパッケージを再設計して自作すべきだろう。
  4. 理由は不明だが、2023年に入った途端に入手困難となっている。2022年まではイギリスの特殊電池専門業者が取り扱っており、管理人もここから大量に購入していたが、2023年になると「在庫は無く、取り寄せもできない」と言われてしまった。あまりの需要の無さに製造停止となったのだろうか。