RPN電卓
1991年3月[1]に自分専用のPCを購入してもらったことから始まった、日常的にコンピュータと戯れる生活。その過程で、管理人には様々な奇癖が身についてしまった。例えば
- キーボードで Ctrl は A の左隣に無ければならない
- エディタはGNU Emacsでなければならない[2]
- SKK以外で日本語が入力できない
- 数字フォントのゼロはスラッシュ入りでなければならない
などで、これらが整っていないコンピュータでの作業能率は著しく低下する[3]。尤も、これらが発露したとて他人を傷つけることは無く、困るのは専ら己のみなので、今のところ矯める気はまったく無い。
そんな一連の奇癖のなかに
- 電卓はRPNでなければならない
という、ある意味で致命的と断言するしかないものもある。
なぜ致命的なのか。それは、ふつうの電卓が使えない体になってしまったにもかかわらず、世界の電卓市場でRPNは絶滅しかけており、こと日本国内に限れば2020年頃を境に新品を正規に入手できなくなった希少種だからだ。どうしても、と言われれば、様々な搦手を労すれば入手できるものの、悲しいかな、往時より品質が劣った並行輸入品を現地価格の倍以上の高値で攫まされるので到底承服できない⸺この現状が、同じ奇癖を持つ御同輩の殆どを「状態が良い、往時の製品を蒐集する」という奇行に走らせる。管理人もその一人だ。
ここでは、管理人が所有・常用しているRPN電卓について、1968年〜2001年に旧Hewlett-Packard Companyが自社で企画・開発・製造・販売した機種[4]を主として、個人的に調査・確認した事項を概括している。
「1,000円も出せば新品が山ほど売られている『電卓』の、しかも『中古品』を買い漁って大丈夫か?」
恐らく世間一般の大半の人には意味不明で理解不能な行動だろうが、大丈夫だからこそ、こんなWebサイトが存在する。いちおう「大丈夫だ、問題ない」と答えられる理由も記述したが、この内容を理解してもらえることなぞ、疾うの昔に諦めた。趣味・嗜好とはそういうものだからだ。
目次
- 序説
- 歴史と現在
- HP製RPN電卓の特長
- Nut/Saturnプロセッサファミリ
- 所有するRPN電卓本体 - 販売期間
- HP-35 - 1972年2月1日〜1975年11月30日
- HP-45/HP-46 - 1973年3月1日〜1976年1月15日
- HP-65 - 1974年1月19日〜1977年1月3日
- HP-55 - 1975年1月1日〜1977年1月3日
- National Semiconductor 4510 - 1975年2月??日〜1977年??月??日
- HP-25 - 1975年8月1日〜1978年5月1日
- HP-91 - 1976年3月1日〜1979年1月1日
- HP-67/HP-97 - 1976年7月1日〜1982年1月11日/1984年12月1日
- OMRON 12SR - 立石電機株式会社(現・オムロン株式会社)の輸出専用機種 1976年??月??日〜不明
- HP-10 - HPで唯一の加算器方式 1977年7月1日〜1979年3月1日
- HP-34C - 1979年7月1日〜1983年4月1日
- HP-12C - 1981年9月1日〜現在
- HP-10C/HP-11C/HP-15C - 1982年9月2日/1981年9月1日/1982年7月1日〜1984年3月1日/1989年1月1日
- HP-16C - 1982年7月1日〜1989年1月1日
- HP-41CX - 1983年10月1日〜1990年11月1日
- HP-41CL - HP-41シリーズのチップセットをアップグレードする同人キット 2010年1月14日〜現在
- Электроника МК-52 - 1983年??月??日〜1992年??月??日
- Электроника МК-61 - 1983年??月??日〜1994年??月??日
- HP-28S - 1988年1月4日〜1992年4月1日
- HP-42S - 1988年10月31日〜1995年5月1日
- HP-48SX - 1990年3月16日〜1993年6月1日
- HP-48GX - 1993年6月1日〜2003年5月30日
- HP-50g - 2006年7月??日〜2015年??月??日
- HP-35s - 2007年7月12日〜2021年??月??日
- WP 34S - HP-20bまたはHP-30bをHP-16CとHP-42Sを合体させたRPN関数電卓に化かすためのオープンソースソフトウェア 2011年6月29日〜現在
- Extra. Casio CASIO-MINI CM-605 - かの有名なカシオミニシリーズの6代目モデル 1974年4月??日〜1974年11月??日
- Extra. Casio fx-10 - 日本初のポケット関数電卓 1974年5月??日〜1975年??月??日
- Extra. Casio fx-7000GA - 管理人が中学3年で初めて購入した中置記法のグラフィックプログラム関数電卓 1990年??月??日〜1991年??月??日
- Extra. HP PrintCalc 100 - 再参入後に発売した活字ドラム式プリンタ付きの中置記法の四則演算電卓 2008年11月13日〜不明(だが終売済)
- 所有するRPN電卓周辺機器
- 所有する電卓に関する書籍
脚注
- ↑ 管理人が高校へ進学する直前のタイミングだが、管理人以外でも、小・中学校からの友人や、高校でできた友人や知人も、押し並べて同じタイミングでPCを購入していた。この当時、東京から凡そ100km離れた地方都市で、公立の、いわゆる進学校と呼ばれる高校に通っていた生徒の結構な数が、同じ希望を抱いていたことに驚くと同時に、それを許可した親が結構居たことも興味深い。「私立に較べて学費が安く済む公立に合格したから」というのが最大の理由だろうが、バブル時代の恩恵を受け地方にも出現し始めた複数のPCショップが毎週のように出稿した新聞折込広告の威力も相俟って、日を追う毎に価格が下落していたことも影響したと思う。ただ、この対象を同級生にまで広げると、PCを持ってないほうが圧倒的だったので、単に類が友を呼んだだけかもしれない。管理人がこのタイミングでPCを購入できた経緯はここで記した。
なお、厳密には、小学校4年でファミコンを、小学校5年で発売と同時にディスクシステムを、それぞれ買ってもらったものの、ユーザの任意に使用できるコンピュータではないため除外した。その意味では、もし、やはり当時猛烈に欲しかったものの友人・知人含め誰一人買ってもらえなかった、ファミコン上で任意のゲームプログラムが自作できるファミリーベーシックを買ってもらえていたら、これを「初めて所有したコンピュータ」としただろう。 - ↑ GNU Emacsには電卓(Calc)モードが実装されており、Meta X C A L C ENTER⇧ で呼び出せるが、このモードでのデフォルトはRPNだ。なぜなら、開発者が、実装した機能や関数をHP-28Sを含むHP-28シリーズやHP-48SXとHP-48GXを含むHP-48シリーズを参考にしたからで、Calcモードのマニュアル冒頭でもその旨を宣言している。それほどまでにRPNはこの業界に浸透している。
- ↑ 当然、Ctrl が左下隅のキーボードやviやvimも使えるし、mozcでも日本語は入力できるし、スラッシュが無いゼロも判読できるが、作業途中での休憩時間とタバコの本数は倍増する。
- ↑ HPは2001年末に電卓事業から撤退後、2003年に再参入したが、管理人は再参入後に発売された機種(本サイトではHP-50gとHP-35sが該当する)には興味を唆られず、よって、これらについては詳細な調査や追跡をしていない。