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HP-10

提供: Memorandum

1977年7月1日〜1979年3月1日に販売された、HP製電卓で唯一、入力に加算器方式を採用したサーマルプリンタ付き電卓。型名の10は「テンキー」から採られた。

序説でも記載した通り、加算器方式の実態は「スタックが2段のRPN」である。即ち、テンキーで入力しディスプレイに表示された数値にひたすら +=  × ÷ を入力することで連綿と四則演算を繰り返すのが加算器方式である。よって、大量の伝票や在庫管理等で、目の前にある数字をひたすら四則演算する場合はキーインする数が最も少なく済むため、現在でも主に経理分野で底堅い需要があり、カシオ計算機・シャープ・キヤノンは現在もプリンタ付きを含め新品を製造[1]している。

本機は当時、日本から大量に輸入され、企業の経理部門向けによく売れた「プリンタ付き加算器方式電卓」に対抗すべく新規に開発されたものだ。このような出自であるため、科学・数学向けや金融・財務向けの関数電卓に内蔵される機能や関数は一切無く、できるのは「四則演算とその表示」と「演算過程と結果の感熱紙への出力」のみである。演算可能桁数とLEDによる表示は10桁で、内部の演算もデフォルトでの表示も浮動小数点数だが、表示は固定小数点数に変更することもできる。メモリは24バイトしかない。あまりの単機能っぷりから、開発時のコードネームをKISS (Keep It Simple Stupid:単純にしておけばいいんだよ) にされたことからも、当時のHP内部での「四則演算のみの電卓の立場」が解る。尤も、このコードネームは、本機の発売日から逆算して開発を開始した時期と推定される1975年〜1976年が、ハードロック・バンドのKissが大ブレイクした時期と見事に重なるので、それにこじつけた側面が強い。

本機はさほど売れなかったようで、他のHP製電卓と較べても販売期間が1年9ヶ月と短い。発売当初は175ドルだった定価も、しばらくすると149ドルに下げられたが、それでも売れなかったらしく、販売店によっては75ドルで在庫処分されている。その希少性から、eBayをはじめとする中古市場やオークションサイトにも殆ど出品されず、出品されたとしても異常に強気な売値(1,000ドル超)が設定されており、おいそれと手が出ない。管理人は、キーボードを含む上面が極端に汚れ、専用充電池も用を為さないほど劣化し、備品管理番号プレートを底面から剥さぬままアイオワ大学から放出されたと思しき本機[2]がオークション形式でeBayに出品されていたのを見つけ、比較的安値で落札できた1台しか所有していない。

スタック なし (加算器方式)
プロセッサクロック周波数 不明
使用電池 専用充電池 (中身は単3形Ni-Cd充電池×4個直列)
製造期間 1977年〜1979年
製造国 シンガポール
1977年発売当時の定価 175ドル (約46,350円)

脚注

  1. 2021年6月現在、カシオは「加算」としてDS-120TW/HR-170RC/DR-240Rの3機種、シャープは「加算」としてCS-2130L/EL-1750Vの2機種、キヤノンは「加算」としてMP1215-D VII/P23-DHV-3の2機種が、それぞれ現行機種としてラインナップされている。いずれも経理向けであるためか10桁以上の多桁を演算・表示できることも特長のひとつ。ただ、なぜ加算器方式に対する呼称が3社とも異なるのか、その理由は不明である。
  2. 落札前の目論見は「キーボードを含む上面の汚れは無水エタノールで拭き取れるし、充電池はリビルドすれば良い。大学からの放出品なので、プリンタ以外は恐らく正常だろう」。果たして、無水エタノールで丁寧に清拭することで演算できる加算器方式電卓に化けた。プリンタも動けば文句ないのだが、現状では無理だろう。